第5回
富士山麓のサウナで
「ホテル スターらんど」(山梨県都留市)
吉祥寺から神田川沿いを歩いて、家に帰る日はなにかに後悔しているときだ。後悔しているときは電車に乗りたくない。
この日は夕方にR-1グランプリ1回戦を受けた。去年は受かることができたので、今年はそれ以上をと意気込んで挑んだが、まったく手応えがなかった。そもそも、平日夕方のR-1グランプリ予選を見にくる人は10人前後しかいない。去年も全く同じ状況で受けて、お客さんの反応は同じだったけど、自分の手応えはめちゃくちゃあった。でも、今年は自分でも全くなかった。
それを引きずりながら、渋谷駅まで歩き、僕はすぐに吉祥寺の蒙古タンメンへ向かった。いつもはあまり食べない、北極ラーメン大盛りを頼み、いつもなら聞こえている大きめのBGMも聞こえないくらい、夢中に食べ、すぐに店を出た。
吹き出た汗なんか気にせず、僕は神田川沿いを歩いた。井の頭公園を抜けたぐらいで、汗が引いて、寒気が襲ってきたのと同時に現実も確信することができた。
多分、落ちてるわ。
そこで僕はタイタンの学校同期に電話をした。こういうときの同期はありがたい。話を聞いてくれ、もういいから、今度、もう1人の同期も誘って、ドライブに行こうという話になった。
自分がR-1に落ちた1週間後、僕らはドライブに出かけた。山梨県方面に下道で行くことだけ決めて、車を走らせた。
昼過ぎに山梨県富士吉田市に着き、昼ごはんで吉田うどんを食べた。つけうどんを食べたが、麺が太すぎる。めちゃくちゃ腹いっぱいになって、すぐにサウナに行けないなと思ったので、(サウナはあんまり満腹時に行かない方がいいよ)近くにある喫茶店で休憩をしようとすることになった。
一緒に行っていた、らっこの平山くんがすぐに調べてくれて、そこに向かうことにした。ひたすら道を真っ直ぐ歩いた。そして、着いた喫茶店がどうやって検索したら、この喫茶店が出るねんと思うぐらいの変な場所にある喫茶店だった。
店内に入ってみると、お客さんはいなく、奥からコーヒーを溢して、洗ったを10回繰り返した、スウェットを着てるおじいさんが出てきた。僕らは左角にあった川が見えるソファに座らしてもらい、コーヒーしかないと言うので、それを頼んだ。
待っている間に店内を見渡してみると、雰囲気が良い。そして、古いけどいい音が出そうなスピーカーがあったので、おじさんに言ったら、そのスピーカーでジャズを聴かせてくれた。ただ、音がめちゃくちゃ出かかった。急に静かな住宅街に爆音のジャズが響き渡る。その次は僕がおじさんが持っているCDの中から、ナンバーガールを選んで、それもかけてくれた。めちゃくちゃ爆音で、もうカオスだったけど、それが面白かった。最高の喫茶店だった。
その後、僕らは車を走らせ、富士吉田市から都留市にある宿泊施設「ホテル スターらんど」へ向かった。ここは合宿で来そうな宿泊施設の見た目をしているのだが、そこについているサウナが素晴らしいらしいので行ってみた。ちなみに入浴だけでも入れるらしいので、僕らは宿泊はしなかった。
「ホテル スターらんど」
住所:山梨県都留市四日市場216
浴槽の中に入ってみると、たしかに宿泊施設についている大浴場の大きさぐらい。でも、入浴者も東京に比べるとはるかに少ないので、全然これぐらいでいい。むしろ、めちゃくちゃ良いと言われる施設でも大箱の入浴施設が僕は苦手だから、丁度よかった。
先に体を洗い、まずお風呂に入った。お風呂は薬草風呂が2種類あって、どちらもぬるめで長く入れた。薬草風呂に入って、少し汗をかいてきたのでサウナに入った。
サウナは90度いかないぐらいと表示は出ていたけど、めちゃくちゃ気持ちいい熱さで汗が噴き出るぐらい出た。それと都会のサウナでは味わえない、ゆっくり入れる感じが最高だった。
サウナは10分ぐらい入った。真横には水風呂がある。これが今回1番の楽しみ。都留市は富士山の麓にある町なので、ここの水は富士山からの伏流水を掛け流している。水はドバドバ溢れていて、見ているだけでイキそうだった。入ってみると、めちゃくちゃ気持ちいい。やらかくて包んでくれる。しかも、真冬の掛け流しはやばい。自然の冷たさなのだ。チラーで冷やしたやつではない、本物なのだ。やはり、サウナのメインシーズンは冬だなと改めて思わせてくれた。
その後、寒すぎて誰も出ていない外気浴スペースで僕らは20分ぐらい話をした。それを4回繰り返した。最高だった。
次の日、起きたら、体に水が行き渡っていることをしっかり感じた。こんな経験は久しぶりだった。サウナはやはり水風呂だなと思った。水風呂だけはその土地に行かないと味わえない水がある。だから、今後も色んな土地のサウナを味わっていきたいと思った。
(文・写真/モサク)