だいふくの浜松びより(仮)9

 

 

それは異様な光景だった。

 

各町内ごとの法被に身を包み、ちょうちんやラッパ、太鼓などの様々なアイテムを持った老若男女達が「オイショー」とも「ヤイショー」とも聞こえる掛け声を言いながら、豪華な装飾が施された屋台を引いて道路を練り歩いていく。大勢のギャラリーがそれを見守る景色は、まるで淡い夢かのような幻想的な世界だった。

 

浜松まつり。浜松市で毎年ゴールデンウィーク期間中(現在は5月3日〜5日にかけて)に開催されるお祭りであり、ほとんどの浜松市民の方が楽しみにしている一年に一度の大イベントである。

 

今年はコロナ禍前に近い内容での開催という事に加えてNHK大河ドラマ「どうする家康」の主人公・家康役 松本潤さんを始めとする豪華な出演者の方々が参加された【家康公騎馬武者行列】が浜松市内で行われ、そのイベントだけで集客は約68万人、三日間を通しての浜松まつりの集客人数は延べ255万人というとんでもない人数が浜松に訪れた。

 

全国的にも注目された浜松まつりは、浜松に引っ越してきて以来、初めて見た人の量だった。あまりにも人が多すぎて、まともに家に帰れなかった。昔、AKB48さんを見るために東京ドームまで行ったあの日の帰り道を思い出した。一緒に行く友達が誰も捕まらなくて一人で行ったっけ。

 

昨年、移住してきてから初めて浜松まつりに参加した。だけど、正直参加している実感があまり湧かなかった。相方・おちゃ丸が色々と用意してくれて、浜松まつりのメインの一つである、凧揚げ合戦の会場の中にも参加する事が出来た。凧が一斉に揚がる貴重な瞬間を見られたのだが、バタバタしていて何だかあっという間に過ぎた。

 

今年は2回目という事もあり、外からゆっくりと見ることができた。

 

初日。去年とは違う位置で凧揚げを見たが、改めて見てやはりすごいなぁと感じた。凧を揚げる人々の熱量が凄く、ラッパや太鼓、オイショー、ヤイショーと至る所で掛け声が飛び交い、参加している人々の活気で会場の温度が上がってると錯覚するほど会場は熱を帯びていた。

 

 

▲凧揚げ会場からの一枚。熱気と活気が凄かった!!

 

 

2日目。ラジオの仕事を終えるとおちゃ丸と二人で街中に向かった。

そこで見た光景こそ、最初の光景だった。ネットで調べた所、御殿屋台(ごてんやたい)と呼ばれる屋台は、釘を一本も使わずに全て木を組んで固定するという伝統の技法が使われているらしく、宮大工のプライドとオーラが感じられる圧倒的な美しさだった。

 

御殿屋台引き回しと呼ばれるそのイベントは、次から次へと美しい御殿屋台が目の前を通り過ぎ、明晰夢と言われても納得できるほど、非日常の世界が街を包んでいた。普段何気なく歩いているいつもの街並みとはかけ離れすぎて、とてつもなく衝撃を受けた。

 

3月の終わり頃から街中で鳴り出したラッパや太鼓の音。この日の為に何カ月も前から色々な準備をして、たくさんの練習を重ねて、その結晶と人々の魂たちが浜松まつりでぶつかり合う。

 

普段自宅で生活していて浜松を感じることはそうそう無いが、ラッパや太鼓の音が鳴り出すと、浜松初心者の俺でさえ『あ、浜松で生活してるなぁ』と思うようになってきた。

 

 

▲浜松まつり名物【御殿屋台】生で見ると凄い迫力!!

 

最終日。

松本潤さんが浜松に来られて、日本中の注目が浜松に集まったあの日。

 

夜。家で作業をしているとラッパと太鼓の音が。

今日中に終わらせて提出しなければいけない資料をまとめていた。見に行きたい気持ちを抑えてパソコンとにらめっこしていた。我慢我慢。

 

・・・。

 

今見なければ来年まで見れないかもしれない・・・。

 

なんなら来年ちゃんと見れる保証なんてどこにもない・・・。

 

・・・。

 

よし。行こう。

 

自転車にまたがり音の鳴る方へ。

御殿屋台を見て。練り歩く人々を見て。また音の鳴る方へ。様々な御殿屋台を見た。

 

どこの御殿屋台もとても素敵だったし、周りを練り歩く人々がとにかく幸せそうだった。祭りって子供の頃から興味持てなかったけど初めて輪の中に入りたいと思えた。

 

気がつくと全く知らない所にいた。

こんなに無我夢中になったのなんて何年ぶりだろうか。

 

浜松まつり。

その光景は異様でも何でもなかった。浜松の多くの人々が、毎年この時期を楽しみに待ち、たくさんの準備を重ね、全てのパワーを注ぎ込み、英気を活力をもらう最高のイベントなのだと肌で感じた。

 

異様などという言葉で表現してしまうのは自分の経験値の無さを証明するに過ぎなかった。

残りの人生で、体験出来るもの、見れるもの、関われるもの。少しでも多くしたいなと思うと同時に、また来年も浜松まつりを見れたら嬉しいな。と思ったゴールデンウィークであった。

 

あ、そうそう。

資料の提出はしっかりと遅れて、33歳にもなってきっちり怒られた事は言うまでもない。

 

てへぺろ。

 

 

▲ラジオ局でお借りした法被に身を包むやらまいかカンパニー

 

(文・写真/やらまいかカンパニー 大福)

 

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