モサクのサウナでぐるぐる1

モサクのサウナでぐるぐる

第1回

サウナは気持ちいいだけじゃなくて

【潮芦屋温泉 SPA水春】兵庫県・芦屋市

 

誰もが一気にテンションが上がること。それは間違いなく、急に決まった旅行だ。

 

僕は動画制作のバイトをしている。コロナになってからはリモート作業だ。いつも作業を始めるのは朝の10時。いつものように9時に起き、シャワーを浴び、Twitterを見ながら髪を乾かしていた。

 

そんなとき、急に上司から連絡が来た。「今日、大阪で収録があるんだけどパソコンが急に動かなくなって、これじゃ収録できない。だから、今から大阪に来て、モサクくんのパソコンを貸して欲しい」

 

今日は家にずっといるだけの予定が大阪にパソコンを渡しに行く旅に出ることが決まった。

 

パソコンを渡すだけ。めちゃくちゃ楽だ。これはもう旅行ではないか。僕はすぐに家を飛び出して、品川に向かった。そこから駅弁を買って、新幹線に乗った。

 

▲普段はあまり買わない贅沢な駅弁を堪能

 

 

いつも、実家がある兵庫県に帰るときはお金がないので鈍行列車で帰る。僕がひとつひとつ通り過ぎてきた駅をすごい速さですっ飛ばす新幹線に乗って、テンションは上がっていた。僕は調子に乗る。

 

学生時代からそんなキャラじゃないのにも関わらず、Instagramのストーリーで新幹線から見える景色を載せて、「急に大阪に行くことになりました!一泊するのでもし空いてる人いたらご飯行きましょう!連絡お願いします!」というのを上げた。

 

そんなこんなで大阪に着いた。パソコンを渡すという仕事が終わり、夕方頃になっていた。何回も携帯を見たが、誰からも返事はなかった。

 

まだ返事の望みを捨ててなかったので、時間を潰そうと思い、普段は入ることはない落語の劇場(天満天神 繁昌亭)に入った。僕は調子に乗っていた。

 

▲灯りが美しい「天満天神 繁昌亭」

https://www.hanjotei.jp/

 

 

劇場に入ってみると、寄席ではなく、落語家さんのツーマンライブみたいなものだった。寄席しか見たことない僕にとって、その落語がまったくわからなかった。

 

劇場から出ると、21時。誰からの連絡もない。もう終わりだ。ここで僕の朝からテンションは一気に落ちた。

 

すぐに電車で兵庫県に帰り、実家の近くにある「潮芦屋温泉 SPA水春」に行った。とにかく僕はこのテンションをどうにかするためにサウナに入りたかった。

 

▲岩盤浴もホットヨガも楽しめる素敵な施設

「潮芦屋温泉 SPA水春」(兵庫県・芦屋市)

https://suisyun.jp/ashiya/

 

 

体を強めに洗い、サウナに入るとサウナ室には若者がたくさんいた。関西の人はよく喋る。僕は気持ちを落ち着かせて集中した。気持ちよく汗をかいて、水風呂に入り、潮風を感じながら全体重を椅子に預けた。

 

すごく気持ちいい。僕の気持ちがようやく落ち着いてきた。

 

そのとき、横の露天風呂で若者が友達に「気持ちいいよな?気持ちいいよな?」と気持ちいいの強要を行っていて、ずっと無視されていた。若者は悲しい顔をしていた。

 

それを見て、僕は笑ってしまった。それと同時に今日の僕にも笑ってしまった。急な旅行にテンションが上がって、地元の友達に連絡して、誰からも連絡が来ずにわからない落語を観に行って。僕は悲しい奴だなと思った。

でも、ちょっと悲しいことは面白い。それが僕にとって、救いではあったけど。