モサクのサウナでぐるぐる3

モサクのサウナでぐるぐる

第3回

星ひとつでも綺麗やろ

【玉の湯】東京都杉並区・阿佐ヶ谷

 

 

先日、友達とサウナへ行くことになった。友達は駅で僕と会うとすぐにiPhoneを取り出し、Googleマップの検索をタップする。

 

「〇〇駅 サウナ」

 

遊戯王のカードセットのごとく、ずらっと周辺にあるサウナが表示される。そこから、さらに尼崎にある阪神そばのなんにもためらいなく一味を大量にかける常連のごとく、高評価をタップし、口コミの星順に並べ直して、マッチングアプリでマッチした数百人の男から選ぶ28歳の女性のごとく、店を吟味していた。

 

今の時代、サウナに限らず、店を選ぶ手段として、当たり前に口コミを利用する。失敗したくないのはわかるんだけど、僕はその感じが少し苦手だ。

 

お笑いでもそういうことがたまにある。

 

もうすぐ、M-1グランプリ2022の決勝が行われる。M-1グランプリは本当にすごい。1回戦からTwitterを賑わし、トレンドにはいつもM-1関連が上がっている。いつしか、芸人の評価もM-1の戦績で評価されるようになった。

 

M-1のサイトに行って、コンビ検索をすれば、そのコンビの戦績がわかるようになっている。おそらく、はじめてのコンビの方と会うときはみんな、その検索エンジンを使っているのだろう。

 

もちろん、M-1はすごい。だけど、それだけで評価するのはあんまり楽しくないと思う。先入観はもったいないと思う。

 

僕は本当にカスで全然わからないのだけど、例えば賞レースで点数がつくものなら、その人のネタは60点かもしれない。だけど、80点のネタをやっている人よりも面白く感じることがある。

 

これは決して裏笑いなんかではない。60点のものが80点のものより面白い。そんなことは絶対にある。これが僕がお笑いというものが好きで、10年もの間、沼にのめり込んでいる理由なのだろう。

 

少し話はずれたが、僕はその駅に降りたら、とりあえず歩きたい。店の看板の字体とか雰囲気で決めたい。ジャケット買いをしたいのだ。

 

この間、事務所でYouTube撮影があったので阿佐ヶ谷に行った。大雨が降っていた。僕は撮影時間を間違えて、2時間もはやく来てしまっていた。

 

あんまり行ったことのない、事務所より奥までの道を歩いてみた。角を曲がって、少し行ったところに銭湯があった。そこだけ大雨を蹴飛ばしているような立派な宮造りの銭湯。その銭湯にふらっと入ってみた。

 

阿佐ヶ谷「玉の湯」。

 

▲「玉の湯」東京都杉並区阿佐谷北1-13-7 

(Twitter:@tama_asagaya)

 

 

浴場に入ってみると、壮大な富士山の壁画。壁全体がエメラルドグリーンに塗られている。そして、天井が遥か彼方高い。外は大雨なのに、銭湯の中は沖縄の海みたいだった。

 

体を洗おうとシャワーのところに椅子を持ってきて、座る。真上にはイルカのタイルがあった。この海にはイルカがいた。

 

体を洗い、サウナに入る。サウナは今ではめずらしい、テレビも無く、音楽も流れていない。2人しか座れない最上段で年季の入った木材をただただ見ていると時間が過ぎた。

 

サウナ室の目の前にある、水風呂に入り、休憩スペースに座り、首の力を抜いた。天井を見ると、遥か彼方すぎた。雨の音もあってか、自然と笑いとよだれが出た。

 

最後、湯船の中から青緑のライトが光るお風呂に入った。すごく幻想的だった。そんなふわふわしている状態でも自分で決めれるものは決めていこうと思った。

 

 

(文・写真/モサク)

 

 

【YouTube タイタンチャンネル】